2006年03月19日

文珍を聴いて泣く〜林家正蔵襲名披露公演

土曜日、珍しく落語会を聴きに行った。これは、九代林家正蔵を襲名した林家こぶ平が(というか、つまり林家正蔵が)昨年に続き来秋したもので、チケットには「凱旋再公演」と謳われていた。他の出演者は、桂文珍、春風亭小朝、林家いっ平、そして曲芸に翁家勝丸という顔ぶれである。

僕は、実はそれ程熱心な落語ファンではない。演芸は大好きだが、どちらかと言えば、落語よりも漫才の方が好きなのだ。秋田に住んでいるという理由もあって、僕が寄席に落語を聴きに行ったのは過去僅かに二回だけである。今回は「寄席」ではないが、僕が本格的に生で落語を体験するのは、だからこれが三回目ということになる。
正蔵の浅草練歩きの大盛況はテレビで観て知っていた。寄席で何十日も顔見世興行(というのかな?)をやったというのも知っていたが、しかし、襲名披露というものがこれ程長きに渡って行われるものだとは知らなかった。口上で、(こんなにお客が入るなら)もう十年くらい襲名披露をやろうかなと言っていた小朝の言葉も、あながち冗談ではないかも知れないなどと思ってしまうくらいのんびりした話で、何だかこの「襲名披露ツアー」自体が落語の中に出て来るエピソードのようであり微笑ましい。

演目は、文珍が「新篇 能狂言 商社殺油地獄(しょうしゃごろしあぶらのじごく)」、正蔵が「一文笛」、小朝といっ平は調べてみたがちょっと判らなかった。
ネット情報によれば、「一文笛」は元々上方の噺で桂米朝の持ちネタであるとのこと。正蔵自ら頼み込んで米朝に稽古をつけて貰いに行ったというエピソードもこの日語られていたので、ちょうどその頃に教わって覚えた噺の一つなのかも知れない。
さて、初めて正蔵の落語を聴いた感想は、何だかあっさりと終わってしまった、であった。元の噺がそもそもどういうものなのかも知らないので、これはあくまでも素人の一印象でしかないのだが、何だか本来はもっと長い噺を急いで途中で切ってしまったような、そんな気がしたのである。いっ平、小朝がそれぞれ20分、文珍が35分あまりの高座だったのに対し、正蔵の高座はちょうど30分程であったから、比べてそれ程短いということもないとは思うのだが・・・。

驚いたのは、文珍であった。
とにかく話が上手い。引き込まれる。そして面白い。この「新篇 能狂言 商社殺油地獄(しょうしゃごろしあぶらのじごく)」は、アラブ駐在の商社マンが、王位を継ぐことになった日本通の王子のために自分達で狂言を演じることになるという筋で、何とその狂言の題が「天才バカボン」であるというとんでもない話なのだが、「や〜な〜ぎ〜の〜し〜た〜に〜ね〜こ〜が〜い〜る〜」「だ〜か〜ら〜ね〜こ〜や〜な〜ぎ〜」とテンポよく繰り広げられるナンセンスな世界にもう大笑いである。
僕はこれを聴きながら三度泣いた。しかし、それは笑い過ぎて腹の皮がよじれて苦しくて泣いたのではない。この噺の中に人情噺的な部分があり、それでほろりとして泣いたのでも、もちろんない。僕は笑っていた。だが、同時に何かに感動して、あらがえず、目尻の辺りがじわじわと刺激されて、そして不思議な涙を流していたのである。
あれは一体何であろうか。
「可笑しくて涙が出る」とは、本来もしかしたらこういうことを指して言うのかも知れない、と僕の目からはまた人生何百枚目かの鱗が落ちるのであった。

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posted by og5 at 21:11| 秋田 ☁| Comment(2) | TrackBack(1) | 芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ウチの親も文珍がズバ抜けて面白かったと言ってました。
Posted by 川口 at 2006年03月19日 21:17
おお、川口君のご両親もあそこに!
やっぱり文珍でしたよねえ。
公演終了後、広小路へぞろぞろと向かう我々は、まるで巡礼者の群れの如くでしたよ。
Posted by og5 at 2006年03月19日 23:34
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林家正蔵
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