2006年08月14日

グラスの告白

ギュンター・グラスが、17歳の時にSS(ナチス親衛隊)の戦車部隊に加わっていた過去を、新聞社とのインタビューで告白したという記事を読んだ。

そう思って振り返ると、「ブリキの太鼓」や「犬の年」で描かれていた市民のリアルな感じ、外からナチスを糾弾するというよりは、(非常に独特な表現方法ではあるけれど)ただ事実を事実として描こうとした結果、やがてそこから「時代」が浮かび上がって来たとでもいうようなあの感じは、触れたくても触れられない過去があったからこそ得られた効果だったのだろうかという気もして来る。

「ひらめ」以後の文学作品は入手困難だったこともあって読んでいないし、彼の東西ドイツ統合等に関する論文も読む気にはならなかったから、僕のギュンター・グラス体験はほんの限られたものでしかないけれど、しかし、少なくともその部分限定的な僕のギュンター・グラス歴の諸作品(「ブリキの太鼓」、「猫と鼠」、「犬の年」)と、今回明らかにされた彼がSSに所属していたという事実は、実はちっとも矛盾してなどいないと思う。

擁護する気もないし、また僕の擁護などこのノーベル文学賞受賞作家にとって何の意味もないだろうが、そういうことではなく、やはり彼だから(SSに所属していたということも含め)あれらの作品は書かれなければならなかったのだろうし、また書くことが可能だったのだろうと思うのだ。

ギュンター・グラスはダンツィヒ生まれのドイツ人だが、この話題、何だかとってもお盆に相応しいような、そんな気がする。

私の一世紀私の一世紀
ギュンター グラス G¨unter Grass 林 睦実

早稲田大学出版部 2001-05
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posted by og5 at 11:30| Comment(2) | TrackBack(4) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。「とってもお盆に相応しいような」、そうですか、なるほど。確かに日本の終戦記念日とか靖国問題とか時期には相応しい。

特に、戦後の克服とは一体なんだったのかと言う意味において、議論の発端となるでしょう。
Posted by pfaelzerwein at 2006年08月14日 15:10
>pfaelzerwein様

はじめまして。
貴ブログにコメント&TBさせて頂きました。
Posted by og5 at 2006年08月14日 17:24
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