2008年05月22日

撃たれなかった一発の弾丸〜「ミスト」

「ミスト」は、完璧な映画ではないかも知れないが、非常に面白い映画だった。
面白いと言っては語弊があるだろうか。何故ならば、そのラストはあまりにも強烈過ぎるから。いや、ラストだけではない。ほぼ全編息の詰まるようなギリギリの緊張感が持続する中で、それは突然やって来る。何て幕切れだろう。
だが、これを面白いと言わず何と言おう、と僕はまた思うのだ。

完璧と思えない要素のひとつに、特殊効果の違和感がある。「ミスト」のそれは、何でもありの今の常識からすると、ちょっと浮いた感じがする。最初は、もっと上手く処理出来なかったものか、とも思った。だが、最後にはそんなことはもうどうでもよくなってしまっていた。あれら特殊効果で描かれたモノ達は結局何でもよかったのだ、ということに気付かされたからである。
いっそ全てが「集団妄想」だったとしても物語が成立する。それが凄い。

僕は今、薬局で撃たれなかった一発の弾丸のことを考えている。あの一発の弾丸こそがこの映画の肝だとさえ思う。
「霧」の中の人々は、まるで木の葉のようだ。人間が人間であるために必要不可欠である「意思」も「意志」も、ここでは全く意味を持たない。彼等の選択はことごとく間違っていたとも言えるし、また別の道を選んでいたとしても結果は同じだったろうとも言えるのである。
だからこそ、僕は今あの一発の弾丸のことを考えている。あれこそが「意志」だ。

スティーブン・キングの原作は読んでいないが、映画は小説とはラストが違うのだという。このラストは、絶対に人々の間で語り継がれなければならない。
僕は呆気にとられ、しかしそれでもまだ身を硬くしたままで、目を瞠ってエンド・ロールを観ていた。その後ろに流れる効果音を、僕は僕自身ではない、もはやそこには映し出されてなどいない誰かとなって、ずっとずっと虚ろに聞いていた。
そして、一番最初にあのスーパーマーケットから出て行った女の顔を思い出し、再び身震いした。

※原作「霧」が収録されているスティーブン・キングの短編集。
            ↓
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posted by og5 at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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